「海外でプレーをする難しさを痛感した!」元プロサッカー選手が今だから伝えられること

アスリートストーリーズの運営会社にはさまざまな経歴を持った者が働いています。

なかでも、最も異色なのが「元プロサッカー選手」だったヒロ(38歳)。10代から20代半ばにかけてドイツでプロ経験を持っています。

今回は、ヒロがなぜドイツに行くことになったのか、どんな苦労を味わい、海外でプロとして生活してきたのかを紹介します。

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ドイツに行こうと思った経緯

行こうと思えば、誰だって世界中どこへでも行けますよ。チャンスは自分で作り出すもの、嗅ぎ分けるもの、だと思っているんで(笑)。努力を続けていればチャンスは平等に降ってくると信じています。続けることが出来る人は行動を起こしますし、チャンスを見いだせると思っています。

ツテとかコネがあったの?

ないです。直感的に判断して、ドイツサッカー協会の扉を叩きましたね。『オレは自信があるのでブンデスのチームを紹介しなさい!』と拙い英語で伝えました(笑)。そしたらバイエルミュンヘンを紹介してくれて、テストトレーニングをしてくれました。あ、この方法が今でも通用するかどうかは保証しませんよ(笑)。

バイエルン・ミュンヘンに入ってみての感想は?

バイエルミュンヘンのセカンドに入団したんですが、正直日本でプレーしていた方が良かった後悔しました。もう全てがハイレベルで、なぜ僕を受け入れてくれたのか、毎日自問自答していましたよ。出場機会も当然なかったため、一つ下のリーグへレンタルしてもらい、そこで3年半を過ごしました。

言葉の壁は感じた?

チーム内でコミュニケーションを取るために心がけたことは、「挨拶」ですね。必ず自分から挨拶しました。そうすることで2、3個会話が生まれるし、ドイツ語のレベルを上げる結果にもなりました。挨拶は国に関係なく、人間関係を築く上で非常に重要だ思います。

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日常生活で支障はあった?

支障はなかったです。会話の想定はしたうえで、あらかじめドイツ語を勉強して出かけていたので、特に支障を感じたことはありません。

監督やチームメイトとのコミュニケーションで苦労した?

文句を言いいたいけれど、言えないときが一番の苦労ですね。あまりに頭に来たときは、日本語で怒鳴っていました。でも怒鳴ると日本語だろうがドイツ人もわかるんですよ(笑)。試合の途中で起用されるとき、監督から戦術を伝えられるのですが、そこの内容を誤って認識してしまい、5分くらいでベンチへ戻されたこともありました。

どう努力し、どう克服した?

ひたすら新聞を辞書で調べて読みましたね。毎日続けているうちに、3ヶ月ほど経つと読めるようになってくるんですよ。そうなると楽しくなってくるので、どんどんしゃべれるようになりましたね。

日本でのプロの道はなかったの?

日本でもオファーはありました。が、日本でドイツ人にレギュラーを奪われただけです。当時は年齢も精神も若かったですね。ドイツに行ったのは若さゆえの意地です。

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ブンデスのどのカテゴリーでプレーしていたの?

ドイツの4部リーグです。当時は4部でやれればJ1でやれると言われていましたし、事実だと思います。今の4部はJ3のレベルだと思います。

今のJ1はブンデス1部で通用する?

通用しないでしょうね。現にJ1で活躍した選手がブンデス2部に移籍しても活躍できずに戻ってますし。リーグのレベル感で言うと、J1はドイツでいうブンデスリーグ2と3の間くらいかな?と思います。

日本人として差別された?

当時、所属チームの日本人は私だけで、レベルの低さを馬鹿にされましたね。日本という国に裕福なイメージがあったようで、「サッカーで食えなくても、仕事はあるだろう?」って言われたりもしました。試合に負けると石が飛んできたり、ケチャップをぶっかけられたり、「日本に帰れ」とも蔑まれました。

練習中、チームメイトの外国人選手に足首の靭帯を切られ、うずくまっているところをポン!って叩かれて、「日本に帰れよ!」って言われた瞬間は殺意を覚えましたね...(笑)。でも今となっては全ての誤解や差別や苦悩は感謝に変わっています。自分の原動力になっていることは間違いありません。二度と経験したくはありませんが...(笑)。

選手視点で見て、ドイツの日本のサッカーの違い

日本では「ボール扱いのレベル向上」を求められますが、ドイツは「個人戦術(自立・自律)の向上」を求めれます。例えばジュニア年代では、日本だとリフティングが重要視されたり、コーンを置いたドリブル練習をするチームが今でも多いです。しかし、ドイツでは日本のような練習はほとんどやりません。ドイツでは、ボールも味方も相手も動くメニューをします。

ジュニア年代では、日本人は世界的に見ても非常に高いレベルにあります、なぜか?それはボールを扱うスキルが異常に求められたため、ボールを扱うことがどの国の選手よりも上手くなってしまったんです。でも日本人は「考えること」を怠ります。自分で考え、判断し、決断する練習量が不足しているんです。

考えることのできる選手、できない選手

ユース年代になると、身体能力など身体の機能が同等になります。考えることを積んできた選手と、単にボールを扱うことしか求められなかった選手との間には、個人戦術に大きな差が出てしまいます。簡単に言うと、ボール扱いを封じられた日本人は、プレーの選択肢が少なく、考える力も乏しいため、負けてしまうんですね。

ドイツではジュニア年代から考える練習を積んでいるので、一つダメでも二つダメでも次の引き出し、また別の引き出しを作り出す力を持っています。引き出しを多く持っていることで、メンタルが低下することもなく自信を持ってプレーを続けることが可能になっていると個人的には思います。

ドイツは「主張」、日本は「調和」

ドイツでは「主張」を求められ、日本では「調和」を求めらる、そこが一番の違いかなと。

決められたことを遂行する力は日本人は世界でもトップクラスだと思います。

でも、一度崩れたメンタルを元に戻せない選手は多い。サッカーに限らずジュニアの時代から、人から与えられすぎていて、自分で考えて決断する経験が少ない日本の生活習慣も影響しているでしょうね。

現に日本でも自信を持ってプレーする中田英寿選手や本田圭介選手は活躍しますよね。主張ができて、自分の画を描く人が日本には少ないため、評価は高いのだと思います。

ドイツと日本のサッカー文化の差

サッカー選手だけではありませんが、日本ではプロスポーツ選手達は「芸能人」的なポジションの人たちという扱いを受けますよね。ですが、ドイツではスポーツ選手のプライバシーは守られています。たとえば、選手がレストランで食事をしているところに、サインをもらいに行こうとするドイツ人は限りなく少ないです。ファンは選手を個人として尊重しており、マナーは浸透していますね。